生きテク No.110

カルト宗教に狂い、5階から飛び降りて下半身不随に
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■生きテク提供者
名前: 富田
性別: 男性
職業: その他
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■最も自分に過酷だった状況
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私の前職はピアノの調律師でした。
風邪を引くと耳が鈍くなるため、仕事にならなくなります。

ある日、風邪で仕事を休んでいると、
私の家にセールスの人がやってきました。
その人は、
破壊的カルト集団Tの霊感商法の人でした。

若かった私は、無料鑑定と言われ、
誘われるがまま教え込みされ、入信してしまいました。

そして24歳?30歳直前まで、
献身者(出家者)として活動していたのです。
しかし、家を出た息子を、両親は放ってはおきませんでした。

破壊的カルトから家族を取り戻すボランティアをしている
牧師さんをともなって、私を連れ戻しにきたのです。

私はあるビジネスホテルに保護され、
そこで生活することになりました。
しかし、当時まだマインドコントロールの
支配下にあった私にとって、
周囲の人々は敵(サタン=悪魔)にしか見えません。

「自分たちが良いことをしていて、世の中の人たちが悪なんだ」
「自分たちだけが清らかで正しいんだ」と思っていました。

部屋を訪ねてくる両親の心配そうな顔を見ても、
「騙されてたまるか」とますます警戒し、

やがて、
「ここから逃げなくてはならない。教団に戻らなければならない」
という思いから発作的に窓から飛び降り逃走……!

しかし、映画のように簡単にはいかず、転げ落ちてしまった私は、
運良く3階の屋根に引っかかり命は取り留めましたが、
第一腰椎圧迫骨折となり、下半身不随となってしまいました。



■どんなふうに苦しかったか?
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下半身不随になった私は、汚い話ですが、
汚物を垂れ流しする状態になってしまいました。
また、4カ月間、ベッドの上からぴくりとも動けず、
日常のすべてに渡ってケアを受けなければなりません。

両親のほかカルト信者救済のボランティアの方々が
汚物の片付けから、食事の世話までしてくれました。

大人用のオムツをつけ、30歳になって下の世話を
してもらう惨めさは堪え難いものでした。

そして、このとき受けたカウンセリングのなかで、
ようやく私のマインドコントロールが解けていきました。

いままで両親やボランティアスタッフを
敵だとばかり思っていましたが、
私自身も目を背けたくなるような体や汚物を、
丁寧に拭いて世話をしてくれる彼らの姿
に、
そんな気持ちは消えていったのです。

すると今度は、
「今まで『世の中の役に立つ』と信じていたものは
なんだったんだろう?」という喪失感と、
それを間違いだったと受け入れなければならない
挫折感の苦しみがやってきた
のです。

そして、両親に対して、
「なんて親不孝をしているんだ」という、
言いようのない、
言葉に出せない申し訳ない気持ちで
いっぱいになりました。

この2つの理由から、自分に存在意義を見いだせなくなり、
舌を噛み切って死のうと思いました。

しかし、それは失敗に終わりました。

■かいけつ!
「これで助かった」という方法は?
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私の世話をしてくれたボランティアの人も、
実は過去に私と同じ境遇にありました。

つまり同じ破壊的カルトでマインドコントロールされ、
保護された経験があるのです。

その人は、私のよき理解者で、
1番励ましてくれる人となっていきました。
私たちは自然に愛情を持つようになり、
結婚を前提におつきあいするようになりました。

彼女という最大の理解者がいたこと。
そして、彼女と家族の励まし。
この2つが、そのつらい時期を乗り越えさせてくれました。

足の指が動くようになるまで3カ月。
立てるようになるまで6カ月。
歩けるようになるまで8カ月。
1年くらい経って、ようやく骨が固まってきて
ある程度の距離を歩けるようになりました。

この長い間、彼女と家族は、
私を精神的にも金銭的にも肉体的にも、
生きるすべてに渡って支え続けてくれたのです。
私もマインドコントロールから抜け出し、
どれだけの人々に支えられているかに気づきました。

そして、残された一生を、今度は私や彼女のような境遇に陥った
人々を助けることに使おうと決心したのです。


私を助けてくれた牧師さんと同じ道を歩もうと、
神学校に入ることにしました。
その学校を卒業する年に彼女と結婚する約束をして、
退院後は神学校に通うことになりました。

■その後。
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33歳で神学校を卒業し、牧師となった後、
彼女と結婚をして、
現在は5人の子宝に恵まれています。
両親を含めると9人の大家族です。

また、カルト信者の救済活動に日々、忙しくしていて、
とても使命感のある仕事だと誇りに思っています。

妻も同じミッションを持っているので、
かっこつけたりすることもなく、
心からの仲間だという意識で使命に燃えています。

「人生はやり直しが効くんだよ」
「誰にでも失敗はある。今度やり直すときに、
人の役に立てばいいんだよ」
と、カウンセリングで教わったことを、
今度は私が伝える側になったのです。

海外では、こういった破壊的カルトからの
救済ボランティアの事業が 社会的に認知されていて、
保養施設なども設置されています。

若い人ほど、思い込みが強く、カルトに洗脳され、
未来を奪われてしまう現実があります。
マインドコントロールから抜け出すためには、
時間と、隔離された環境が必要なのです。

そのため、海外にある保護施設のようなシス テムを
日本にも取り入れていければと、力を尽くしています。

また、救済しても、その後の社会復帰がとても難しいので、
そこを改善できればと努力しています。


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