私は百貨店の販売員として
何十年も働いてきました。
仕事一筋の人生で、
同僚やお客様から頼られる日々に
充実感を覚えていました。
しかし、独身の私は家に帰ると
一人きりの生活が待っていて、
それが当たり前になっていました。
年金生活に入り、
その後、長年の労働から解放された
自由な時間を手に入れた時、
最初はそれを楽しめると思っていました。
しかし、思い描いていた
「悠々自適な老後」
はすぐに虚しさと孤独感に変わりました。
周囲の同年代の人たちは、
子どもや孫の話を
楽しそうにしています。
「娘が結婚した」
「孫にこんな可愛いことを言われた」
という話を聞くたびに、
自分の胸にぽっかりと
穴が空いたような感覚に陥りました。
「なぜ自分は若い頃に恋愛や結婚を考えなかったのか」
「仕事だけに打ち込んでいた結果がこれなのか」と、
何度も自分を責めました。
夜になると、
ふと「このまま私が今日死んだら、
誰にも気づかれないまま何日も放置されるのだろう」
という恐怖が胸を締め付けました。
テレビを見ていると、
孤独死のニュースが
流れることがあります。
そのたびに
「これが将来の自分の姿かもしれない」と思い、
背筋が凍るような気持ちになりました。
実際、隣近所との付き合いもほとんどなく、
町内会の行事にも
顔を出すことはありませんでした。
同年代の人との会話も苦手で、
話しかけられても上手に返せず、
いつの間にか
距離を置くようになっていました。