荒れた濁流のように混乱する思考の中、
ふと、外に飛び出す際、
無意識に持って出た携帯電話に気が付きました。
気になって携帯電話を開いてみると、
心配した妻と娘からの電話、
そしてメールの着信がたくさん届いておりました。
はっと我れに返り、混乱した精神状態から覚めた時、
まず頭に浮かんだのは
保険に加入していないという現実的な状況でした。
自分が死んでも借金は残り、そしてそれは妻と娘にのしかかります。
そう思うと、とても身を投げるなんて出来ません!
私はこうして、自殺を思いとどまりました。
家に戻った私を迎えてくれたのは、
目を真っ赤に腫らし、大声で泣きながら、
「どんな状況になってもお父さんと一緒に生きたい」
と言ってくれる妻と娘の姿でした。
こんな自分でも愛してくれている家族がいるんだ、
と思うやいなや、とうに失われていると思っていた
「勇気」が私の中にみるみる湧き上がってきました。
借金の苦しみは支払いに追われ、
今まで築いてきた物がどんどん消えて行きます。
お金もプライドも住まいも、生活の質も。
…無くす悔しさの中で最後の最後で大切なことに気づきました。
それは無くして行く物ではなく、
大切なのは残っているモノ。自分の命。
そして妻、娘がいる!
この借金苦が教えてくれた大切なことでした。
これだけ残っていればやり直せる!そう決意しました。
自分の腹は座りました。
それからは妻と共に、
なんとしてでも死にものぐるいで働き、借金を返しきろうと思いました。