34歳の頃、地元の病院の事務に勤め、子供は一人。
裕福ではありませんが、それなりに家族仲良く生きておりました。
2007年の春、当時アメリカの不動産価格は高騰し、
BRICsなど新興国の株価も面白いように上昇していました。
一方、その頃の日本では国の年金システムが頼りにならず、
老後の生活資金は自分で稼がないといけない云々が
広く言われておりました。
そこで、自分では先んじているつもりで投資に手を出しました。
当面は使う予定のない預金を某ファンドに預け、
はじめは、投資信託にチャレンジしました。
一日数千円の稼ぎの私が、パソコン画面を見ると、
投資信託のほうが日によって万単位で稼いでくれているではありませんか。
これは定年になるまで続けていれば、老後の資金は本当に稼げるかもしれない。
そんな、甘い幻想を抱いた矢先、
アメリカの金融バブルが崩壊し始めたのです。
その頃はまだ、世界経済がこれほどまで行き詰るとは予想できず、
一定期間の調整の後、再び上昇に転ずるものと信じておりました。
そして、
・大きな調整に対して、臨機応変に対応するため
・ハイリターンを得るため
国内個別株に資金をシフトしました。
その当時は自分のリスク管理能力に自信があったのです。
しかし今になって考えてみると、それは自らの過信でした。
そのとき、すでに自分は、投資の魔力に取りつかれていたのです。
毎日の評価額の上下に心奪われ、
自分の世界が世界経済と連動しているかのような
何ともいえない充実感を感じておりました。
かたや妻は投資などにまったく関心がなく、
資産運用のためにお父さんはよくがんばれるわね。
などと言ってくれており、私自身も家族のためと思い込んでおりましたから、
まさか、自分が投資にのめりこんでいるなどとは考えもしませんでした。
しかし、私の資産は金融危機の影響で確実に傷を負い、
挽回を期して個別株に乗り換えたものの、
徐々に傷口は広がっていきます。
買った銘柄の株価が気になり、
携帯で一日に何回も株価をチェックせずにはおれません。
下がったときは突き落とされたようなショック・不安で頭が一杯になり、
仕事にも集中できませんでした。